肉の手帖
ゼロから学ぶ畜産 / 国産牛【こくさんぎゅう】
3行でわかる国産牛
- 日本で育てられた期間が最も長い牛のことを「国産牛」といいます。
- 商品ラベルに「国産」と表記されない国産牛もあります(銘柄牛など)
- 国産牛でも、飼料(エサ)まで国産とは限りません。
国産牛とは
国産牛とは、日本での飼養期間(育てられた期間)が最も長い牛のことです。
たとえば、日本で20ヵ月・オーストラリアで8ヵ月を過ごした28ヵ月齢の牛は、国産牛です。一方、日本で8ヵ月・アメリカで20ヵ月を過ごした28ヵ月齢の牛は、アメリカ産の牛です。
字のとおりの「日本で産まれた牛」という意味ではないので、ご注意ください。
飼養地域が3ヵ国以上にまたがる場合は、各国の飼養期間どうしを比較します。
たとえば、日本で12ヵ月・ブラジルで8ヵ月・フランスで8ヵ月を過ごした28ヵ月齢の牛は、日本での飼養期間が最も長いので、国産牛として表記されます。しかし実際は、日本での飼養期間は12ヵ月、海外での飼養期間は16ヵ月ですので、海外生活のほうが長かったことになります。
このように、場合によっては、海外暮らしのほうが長かった国産牛が誕生することもあります。
銘柄牛(ブランド牛)は、商品ラベルに「国産」と表記されないことも
国産牛は商品ラベルに国産である旨を表示しなければなりません(食品表示基準。ちなみに輸入牛肉は原産国名を表示する義務があります)
ただし銘柄牛には例外があります。
銘柄牛とは、いわゆるブランド牛のことで松阪牛®などが該当します。
国産の銘柄牛で、銘柄名に地名(松阪、神戸、近江など)が入っている場合、国産である旨を表示しなくてもかまわないと定められています。銘柄名に入った地名が国産であることをかわりに伝えているためです。
この地名には、以下の3つが該当します。
- 都道府県名
- 市町村名
- その他一般に知られている地名
(食品表示基準 第18条 第1項 第2号より)
ただし、銘柄名の地名と、最も長く育てられた地名が異なる場合は、その両方を表示しなければなりません。
なお、このルールは国産の銘柄牛のみに適用されます。海外での飼養期間が最も長い銘柄牛は対象外です。
※「松阪牛®」は、松阪肉事業協同組合の登録商標です。
牛トレーサビリティシステムで、最も飼養期間の長い地方がわかる
2001年に起こったBSE問題をきっかけに、日本では牛トレーサビリティ制度が開始されました。これは国内を流通するすべてに牛に個体識別番号を与え、生まれてから消費者へ届くまでの履歴を管理するシステムです。
この個体識別番号を「牛の個体識別情報検索サービス」(運営:独立行政法人家畜改良センター)で検索すると、その牛を誰が・どこで・どのくらいの期間、育てたのかわかります。この期間を見ることで、ラベルの表示と飼養期間に矛盾がないかを調べられます。
国産牛でも、エサまで国産とは限らない
日本で与えられている牛の飼料(エサ)は、その大部分を輸入に頼っています。
2011年のデータですが、国内で使われた肉牛用のエサのうち、粗飼料は全体の10パーセントほどで、穀物飼料が90パーセント近くを占めました。そしてこの穀物飼料の代表格である飼料用とうもろこしは、日本国内では生産していません。
もちろん外国の飼料についても、安全なものを輸入するよう、関係者が選定・管理を徹底しています。
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